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歌姫 最終話
「歌姫」(TBS公式)
※TBS系列・金曜夜10時放送

ハッピーエンド、といっていいでしょうね。確かに太郎と鈴は結ばれることはなかったのだけど、それぞれに人生を重ねることの幸福を得た。だからこそ、あのとき出会った人たちが今もなお繋がり、巡り巡ってそれぞれの孫である旭とルリ子が出会うこととなった。二人がその祖父・祖母が過ごした日々の物語や、自分たちの名前の由来を知ったら、どんな風に感じることでしょう。そんなことも想像させる、「大団円」なエンディングだったと思います。

崖から転落してしまった太郎は、翌朝浜辺に漂着しているのを鈴に発見される。鈴の父・勝男に抱き起こされた太郎は、両手で頭を抱え苦しみだす。その様子を見た鈴は太郎が昔の記憶を取り戻したであろうことを察知、ついに来るべきときが来たことを思い、涙を流す。
長い眠りから目覚めた太郎は、連絡を受けて駆けつけたかつての妻・美和子と対話。美和子が鈴の家族・岸田家に「太郎は岸田家で過ごした10年の記憶を失っている」と告げ、岸田家の皆は肩を落とす。
美和子の元に戻ると決意した太郎こと及川勇一。白いスーツに身を包んだその姿・目つき・話し振りは、まさに太郎とは別人のものだった。まるで他人のように、世話になった礼と別れを告げられた鈴は気丈に振舞おうとするが、堪えきれずオリオン座から飛び出していく。
映写室を訪れた勇一。ジェームスは目の前に立つ男はかつての「太郎さん」ではないと思い、やりきれない思いを噛みしめながら、自分は太郎さんに世話になった者だと告げる。それに対する返答に、ジェームスは胸を衝かれる。
「元気にやりよるがぞ、ジェームス」
その声・口調・目の光は、まさしく太郎のものだった。

戦争までの記憶も、そして岸田家と土佐清水で過ごした10年間の思い出も、全て取り戻した太郎。しかし、まだ見ぬ娘・さくらのためにこれからの人生を生きていくことを決意した太郎は、このことは誰にも言うなとジェームスに言い含めます。
鈴をはじめ岸田家の人たちは、その大きな感情の波の中で、太郎の真相には気づかなかったでしょう。でも、鯖子は恐らく、太郎の目を見て直感的に気づいたのではないかな。そして、すれ違いざまに太郎がふと浮かべた笑みを見たクロワッサンも、きっと太郎が太郎であることを悟ったことでしょう。

そして現代。
鈴はオリオン座で働くことになったクロワッサンと夫婦となり、映画館の経営を続けますが、平成十九年六月、まさに今年に他界。オリオン座も閉館することになった。
その最後の上映作品となったのが、「歌姫」
あれから後、ジェームスこと神宮寺くんが「ジェームス太郎」という筆名で脚本を書き、制作された映画だったのでした。
そのストーリーはまさに、このドラマで描かれた物語そのもの、ということなのですね。

もともと舞台作品として高評価を受けていた話、ストーリーの軸がしっかりしていて、最後に様々な要素がピタッと一点に集約されていく展開は見事。ドラマらしいドラマという感じがします。
映画という媒体でも見てみたいですね。この「映画」というのがこの物語の大きなテーマでもあるわけですから。視聴率がかなり苦戦したので、「ガリレオ」のような大きな展開にはならないでしょうが、むしろこういう作品はそんな必要はありませんし。
いつかサタケさん自身がメガホンを取って、というのは実現するんじゃないかな。御当人もそういう意欲はきっとあるでしょう。このドラマでも演出担当している回がありますし。期待したいですね。
ともあれ、よい作品だったと思います。視聴率が低いのも古臭いのも関係なし。噛めば噛むほど味が出る、心に沁みるドラマでした。

グッときたぜよ!

テーマ:歌姫 - ジャンル:テレビ・ラジオ